2014年3月21日金曜日

愛する人々へ

この題はニ-チェが母親と妹にあてた書簡集である。この本を図書館で借りて読んでいる。1951年に出版されているからもう半世紀以上の前のものである。紙は茶色に変色している。福翁自伝を読む前は同じ日本人である諭吉を一万円札の顔と義塾の創設者くらいの認識しかなかった。ましてやニーチェなどはさらにである。キリスト者になってから名前と写真位は知っていたが写真で見る鋭い目にキリスト教に反対し晩年は精神的な病気に罹って亡くなった位である。キリスト教に反対していたからその結果だなどと誤った認識をして納得していた。

ネット見ると色々書かれているが実際どうなのだろう。本を読んでいると彼の別な一面が見えてくるような気がする。少なくとも以前のような否定的な捉え方はできなくなった。学生時代は成績優秀で勉強だけではなく、深く音楽を愛しているのがよくわかる。楽器も扱えるようだ。音楽を愛するということは人間的にも何か優れたものを見るような気がする。それに文面から母親に対する態度は謙虚である。後半は妹に宛てた手紙が多くなっている。その手紙を読むと妹思いのお兄さんという感じがピッタリであり、信頼を置いている様子がうかがえる。どこにでもいる妹を特別な思いで見ている兄の姿がある。こんなニーチェを否定的な発想で捉えていいのか疑問に思う。若くして大学教授になったが教授時代の後半は頭通と目に悩まされていたようだ。本の最後の説明によれば長年にわたる精神的肉体的な過労と睡眠剤の常用が直接の動機となったような書き方をしている。そうであることを願う。

ボンへファーの婚約者との書簡集を読んだことがあるがそれほど感じなかったがこの本はニーチェに対しての偏見を持っていた所為か少し考えさせられた。そして晩年の彼の苦しみが少し理解できるような思いがする。彼のことを肯定的にもう少し知りたい。しかし、気力、体力、知力とオールナッシングだから無理かな?