2015年12月11日金曜日

絶歌 余禄

…たおやかに照りつける半透明の春陽が僕を静かに炙る。罪人にとって明るい太陽の光は地獄の業火だ。
 自分は今どこに立っているのだろう。
 「ひとりで生きて行く」。そう決意し安全な籠を飛び出して十年。僕は本当に、ただ逃げたかっただけなのかもしれない。
 自分の過去から。
 自分自身から。
 でも結局どこへ行っても、僕は、僕から逃げれなかった。
 もう、逃げるのはやめよう。自分の立つ場所がどこであろうと、背に負った十字架の、その重さの分だけ、深く強くめり込んだ足跡を遺そう。二度と戻らないこの一瞬一瞬に、一歩一歩くっきりと、自分の足跡を刻み込み歩こう。
 …
 僕は足に力を込め、地面を踏みしめて歩き出した。
 どんなに遠回りしても、どんなに歪で曲がりくねっても、いつかこの生命の涯に後ろを振り向いた時、自分の残した足跡が、一本の道になるように。


で終わっている。偽名であり、本籍は変えていないだろうかある意味で「偽って生きる人生」であろう。生きることは生易しくない。毎年あの日が近づくと二遺族に手紙を書いているそうだ。遺族にとってどれだけ慰めになるだろうかむしろフラッシュバックのように思い出されないだろうか等々…。